塗料技術の課題

環境対応と高機能化がこれからの塗装技術のキーワードになるでしょう。そこで塗料樹脂の開発という観点から塗料技術の歴史を振り返ってみたいと思います。

塗料技術のパラダイム(ある時代に共通枠組み、方法論、ものの見方等)がどのようにシフトしたかと考えると、まず、隆盛となった第1のパラダイム「各種ポリマーの展開」があります。次いで第2のパラダイム「ポリマー技術の高度化」があります。これは樹脂の分子設計・樹脂微粒子設計を含む樹脂設計を高度化させることで高性能を実現してきた時代です。そして現在第3のパラダイム「高機能化と環境負荷低減」の時代に入っていると思われます。高機能化では樹脂設計の面のみならず、機能性顔料・機能性添加剤(薬剤)等の開発によって塗料の領域を押し広げているようです。この分野はニッチ(隙間)な分野であるにも関わらず、機能性塗料は知識集約型、高付加価値型の塗料と言えます。また環境問題への取り組みの大切さは前に述べた通りです。

さて、塗料は典型的な複合材料ですが、複合材料であるがために発展してきた固有の技術があります。塗料の要素技術には樹脂設計技術・架橋技術・分散技術・薄膜形成技術・材料評価技術・機能化技術があげられます。が、こうした技術は周辺分野の材料開発との関連も深くお互い刺激しあっています。技術もマーケットもグローバル化している今だからこそこうした技術を活かした独自性のある製品開発が望まれているように思われます。

塗装前の大切な素地調整

塗料は塗る物の表面にしっかりとくっつくことが必要です。そのためには人間の瞳が瞬きをするたびに瞳の表面に水が補給され、その上を素早く油が濡れ広がるのと同じように、塗料はまず塗る物の表面に濡れ広がる事が大事になります。塗る物の表面に汚れが残っていると、例えば金属・プラスチックなら油や離型剤が残っていたり、木材なら毛羽が残っていたりすると、濡れが悪くなって付着不足や美観をそこねる可能性が出てきます。そのため、塗る物の表面を塗装できる状態、塗料が均等に濡れ広がるように調整することが、塗装の第1歩になります。屋根・外壁塗装や金属・木材塗装など、すべての塗装における第1歩の作業を素地調整と呼んでいます。金属の素地調整方法は、塗る物の隅まで鋼玉を高速で叩きつけ(ショットブラストと呼びます)さびを除去します。このさびとり作業をケレンと呼びます。クリーンがなまってケレンになったそうです。車やプレコートメタル(PCM)の素地調整にはリン酸亜鉛化成処理と呼ばれる表面処理が行われます。表面処理液中に鋼板を浸漬すると、鉄の一部は処理液中に溶けて、酸化・還元反応で化成被膜が形成・熟成されて、鉄表面は細かくち密な結晶(化成被膜と呼びます。)で被覆されます。この処理で塗料の付着性と防錆性(ぼうせいせい)が向上します。木材の素地調整では毛羽を除去するために水引き研磨を行います。温水で表面を湿らせ、乾燥後に毛羽立った所を逆目から研磨して取り去ります。この他、加工時の刃物による鉄汚染の除去や漂白(ともに薬品処理で修正)、打痕の修復(アイロン当て)など、他の素材にはない素地調整作業があります。